伝統を受け継ぎ、未来への一歩を刻む
「ほんとうの私」を見つける明の星祭

浦和明の星女子中学・高等学校

「正・浄・和」を校訓に掲げるカトリックミッションスクールの浦和明の星女子中学校・高等学校。「Be your best and truest self.」をモットーに、ありのままの自分を表現できる校風が魅力だ。毎年難関大学への合格者を輩出する進学校でもある。その一方で、人間としての成長を促す学校行事にも力を入れている。なかでも秋の「明の星祭」は、毎年約8000人が来場する一大イベントだ。明の星祭顧問の大井啓嗣先生と明の星祭実行委員会の生徒7人に話を聞いた。


浦和明の星女子中学校・高等学校では、生徒の自己実現を目的に、球技大会や合唱コンクール、修養会など様々な学校行事を行っている。なかでも、例年9月上旬に開催している「明の星祭」は、生徒が活躍する姿を学外に披露する最大のイベントだ。59回目を迎えた今年の基本理念は「未来への一歩を刻む明の星」。伝統を受け継ぎながらも新たなことに挑戦するという意味が込められている。また、キャッチコピーの「星花繚乱」は、生徒一人ひとりの個性が一丸となり、花のように咲き誇る姿をイメージしている。

当日は、クラスや部活動などさまざまな団体が企画を行った。内容は、脱出ゲームやお化け屋敷、飲食物の販売、同校の歴史やSDGsをテーマにしたポスター展示、部活動のステージ発表など様々だ。このほか、歌やダンスが得意な生徒がパフォーマンスする「歌姫」「舞姫」や、景品を目指してキーワードを集めるスタンプラリー、全校生徒から「明の星あるある」を集めたメッセージボードなど、個性豊かな企画が目白押しだ。生徒の様子について、明の星祭顧問の大井啓嗣先生がこう話す。

「生徒が自分らしく輝く姿が随所で見られるのが、明の星祭です。生徒一人ひとりの行事に対する思いは異なりますが、話し合いを重ね、互いに歩み寄りながら一つの作品を作り上げています。この経験を経て『ほんとうの私』を見出してほしいと思います」

伝統を受け継ぐ実行委員会の新たな挑戦

縁の下の力持ちとして明の星祭を支えるのが、明の星祭実行委員会だ。委員長と6パート(団体・校内管理・会計・広報・企画・ゲート)のリーダーを中心に、中高6学年計84人で構成。各パートに分かれて、約半年かけて準備を行った。生徒たちは勉強や部活動と両立しながら、明の星祭を作り上げた。学校の魅力について、実行委員のある生徒がこう話す。

「明の星は、考え方が違っても、ありのままの自分を受け入れてくれる学校です。この校風が学校生活の中に自然と根付いていると思います」

明の星祭を運営するうえで、様々なルールが設けられている。生徒たちは決められた作業をするだけではなく、ルールの意味を考えながら準備を進めていく。例えば、会計パートでは資金や売上をあえて手作業で管理するようにしている。お金を扱う責任を学ぶためだ。また、ルールを遵守するなかで実行委員以外の生徒と意見がぶつかることもある。頭ごなしに否定せず、互いを理解する姿勢を大切にしながら、よりよい明の星祭を作り上げている。様々な人と関わり、主体的に考え、一つの行事を作り上げる経験を通して広く社会で貢献していくために必要なことを学んでいる。

今年は新たな試みとして、パンフレットやチケット作成のデジタル化に挑戦した。数年前の実行委員が提案した案で、当時は実現に至らなかったものだ。デジタル化という時代の流れを踏まえて、先輩が残した提案書を大切に引き継ぎ、改良を重ねてきた。生徒が考えた案を単年度で終わらせず、数年越しに実現できたことは、生徒たちにとって大きな一歩だ。

伝統を受け継ぎながら新たな挑戦を重ねる中で、生徒たちは自分らしく成長していく。最後に大井先生が、受験生や保護者に向けてこうメッセージを送る。

「受験勉強では点数が重視されますが、人との競争がすべてではありません。行事や委員会活動など、答えのない活動を通して成長するのが学校です。実行委員にも、まずは自分たちが楽しむことが、周囲を楽しませることにつながると伝えています。普段の授業でも知識の習得にとらわれず、学びの楽しさに気付いてもらえるように工夫しています。受験生の皆さんにも、勉強も、それ以外の小学校生活も、存分に楽しんで欲しいと思います」

明の星祭実行委員会
委員長と6パートのリーダーたちの声

●委員長

生徒全員が、多彩な展示や発表を通して自分らしさを発揮できるのが、明の星祭です。特定のパートに所属せず、すべてのパートに関わりたいと思い、委員長に立候補しました。パート間の連携には特に気を配り、トラブルを未然に防ぎました。人と話すことがあまり得意ではないのですが、様々な人と関わる中で、自分なりの接し方や伝え方を考えるようになりました。実行委員の仲間や友人など多くの人のおかげで、委員長をやり遂げることができました。

●団体パート

クラスや部活動の企画を募集し、内容の確認や調整を行いました。企画に参加するためのルールが変更されたこともあり、十分に理解されていないことがありました。資料をわかりやすい文章に変えて、重要な内容のみを抜粋版として配布することで、生徒全員に共有しました。嫌われ役になることも多いパートですが、仲間と協力して、明るい雰囲気で仕事をやり遂げました。これまで先輩に支えてもらったように、来年は後輩をサポートしたいと思います。

●校内管理パート

校内管理パートの役割で特に重要なのが、準備日・片付け日の備品移動です。教室ごとに必要な備品の数を確認して、安全で効率のよい動線を考えました。今年は雨が降り、例年と違う対応が必要でした。雨天時の引き継ぎ資料がなかったため、対策を一から考えて、臨機応変に行動しました。情報を正確に伝える難しさや、誰でも質問しやすい雰囲気作りの大切さも学びました。後輩に仕事を割り振る経験を通して、周りを見る力が身につきました。

●会計パート

明の星祭の準備費やお釣り、売上金をすべて手作業で管理しました。お金のやり取りは責任が大きいため、情報を整理して、代表者に簡潔に伝えるように徹底しました。また、生徒の不安に寄り添うために、笑顔で対応することも心がけました。活動を通して、自分の仕事をこなすだけでなく、周囲が作業しやすい環境を整えることが大切だと気づきました。

●広報パート

数年前から考えていた、チケットの作成とパンフレットのデジタル化を進めました。チケットは、先生からExcelの使い方を教わり、手作業よりもミスが少なく、効率的に作成できました。パンフレットは、QRコードを読み込むことで、タイムテーブルや企画一覧を見られるようにしました。これまでのやり方を大きく変えるため、許可をもらうのが大変でした。自分が中心となって進めた案を実現できたことで、今後の自信につながりました。

●企画パート

歌姫・舞姫、スタンプラリー、メッセージボード、後夜祭の企画を担当しました。他のパートや実行委員以外の友人にも意見を聞き、企画をブラッシュアップしました。歌姫・舞姫では、出演者である生徒の要望と企画のルールをすり合わせながら準備を進めました。当日、立ち見が出るほど盛り上がった会場を見て、頑張ってよかったと思いました。実行委員の活動を通して、やるべきことの優先順位を考え、気持ちを切り替えて行動できるようになりました。

●ゲートパート

中央玄関前のゲートの制作を担当しました。デザインの募集から設計、木材の加工まですべて自分たちで行いました。難易度の高いアーチ状のゲートを完成させるために、何度も企画案を練り直しました。夏の暑い中も力作業を行うのは大変でしたが、やりがいがありました。不安もありましたが、仲間や先輩、先生からの励ましが支えになりました。明の星祭当日、雨に打たれながらも力強く立つゲートを見て、誇らしく思いました。

取材日:2026.9.16