授業で学んだ知識を、社会で活きて働く知恵に
自分らしい未来を創る力を育む「みらい科」

麴町学園女子中学校・高等学校

1905(明治38)年の創立で、120年以上の歴史を持つ麹町学園女子中学校高等学校。「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性」になるという教育ビジョンを基に、独自の探究学習「みらい科」を展開。課題発見力やレジリエンスをはじめ、生徒たちが変化の激しい時代を生き抜くための資質・能力を育んでいる。その具体的な取り組みについて、みらい科主任の飯泉恵梨子先生に話を聞いた。


―「みらい科」を設置した目的を教えてください。

みらい科は、「なぜ学ぶのか」を生徒一人ひとりが自分なりに見出すこと、学習観の形成を目的に設置されました。

中学校と高校で、生徒たちはさまざまな教科を学習します。どの教科にも未来を生き抜くために必要な力が詰まっていて、現実の複雑な課題を解決するには一つの教科だけでなく、教科を横断した知識が必要です。たとえば環境問題について考えるとき、地球温暖化や酸性雨の原因を理解するには理科の知識が欠かせません。森林破壊や公害などの歴史を学ぶ社会科や、SDGsの視点を導入した家庭科も重要でしょう。自分の考えを表現する国語の力も不可欠です。

このように、各教科の学びは独立した点ではなく、つながり合って線や面となり、課題を解決する力になります。そうした教科間の知識のつながりや、教科と実社会のつながりを理解できると、「なぜ学ぶのか」が明確になって学ぶ意欲が大いに引き出されるでしょう。そのことを生徒たちが身をもって知り、学校生活で得た知識や経験を実社会に活かすためのハブとなることを意図して、みらい科では探究学習に取り組んでいます。

―具体的にはどのように学んでいくのでしょうか。

みらい科の学びは中学1年から高校2年までの5年間で、学年ごとにテーマを設定しています。まずは「探究基礎」で、各テーマを探究するのに必要なスキルを約半年かけて習得し、残り半年の「探究実践」で、そのスキルを活用しながらゼミ形式で探究学習に取り組みます。

飯泉 恵梨子 先生

自ら問いを立てることが探究の出発点ですが、さあ問いを立てましょうと言われても、生徒、とくに中学1年生にはハードルが高いでしょう。そこで、中学1年生は「ロボッチャ®」でみらい科の学びをスタートします。これはパラスポーツのボッチャをベースに、レゴ®製ロボットとプログラミングを組み合わせたテクノロジースポーツです。この面白さは、考えた通りに進まないということ。理論上、必要な数値をプログラムに入力すればロボットは正確に動くはずです。けれども実際は想定通りにいかないことだらけで、生徒たちは壁に突き当たります。そして、なぜうまくいかないのか、データを取りながら仮説検証を繰り返して改善を重ねます。この試行錯誤のプロセスの中で、探究する姿勢が自然と身についていきます。

―企業と連携した取り組みにも注力されていますね。

企業が立ち並ぶ麹町という地の利を活かして、近隣企業と連携した授業を実施しています。中学3年生は、麻布台ヒルズに出店している大垣書店と連携して「書店プロデュース」に挑戦中です。書店の一角をお借りして生徒たちが選んだ書籍を販売するのですが、視察やマーケティング調査を重ねるにつれて、自分が推したい本ではなく、この書店を利用するのはどんな人たちなのか、その人たちが読みたいのはどんな本か、生徒たちは自分の世界の外側に出て、多様な視点を獲得していきます。

高校2年生は、米粉クッキーとレトルトカレーの開発に取り組んでいます。授業では大丸東京店のスタッフの方々をお招きし、商品開発のレクチャーをしていただきました。プレゼンテーションの講評では、生徒たちの発表に対して、「アイデアは面白いけれどプレゼンに説得力がない」「〝青春の味”というけれど青春は人によって違う」など、プロからの本気のフィードバックが行われます。それを受けて、生徒たちの目の色がみるみる変わっていく様子が印象的でした。真剣に働く大人の言葉は、生徒の心を大きく動かすようです。

米粉クッキーとレトルトカレーは9月の葵祭(学園祭)でテスト販売を行い、11月には大丸東京店で販売します。自分たちの企画が教室内にとどまらず、実際に商品化され、世に出る。このような「社会実装」も、みらい科を象徴するキーワードです。

―みらい科の教育の中で大切にしていることは何ですか。

壁に直面してもやりぬく力や、他者と協働する中での気づきがみらい科の大事にしていることです。そのため、生徒たちには「多様な意見を取り入れる姿勢が大切」ということを伝えています。グループワークを通じて、自分とは考えの異なる人の意見に耳を傾け、いいなと思ったら柔軟に取り入れてブラッシュアップしていく。一つの考えに固執せず、対話しながらより良いものを目指す。こうした姿勢は、社会で直面するさまざまな課題を解決するのに欠かせないからです。

本校の教育ビジョンは、「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性」になることです。変化が激しく、これを選べば安泰というレールのない時代、自分で自分の人生を切り開く力が求められています。大学進学においても、有名大学だから行くのではなく、自分のやりたいこと、なりたい姿がまずあって、それを実現できる大学だから選ぶ。その先の未来でも、自分らしい生き方や働き方を創造し、社会貢献につなげることができる。そのような素晴らしい未来の種を、みらい科で見つけて一緒に伸ばしていきましょう。

校長からのメッセージ

「やりきること」「レジリエンス」「多様性」3つを身につけ、自立して生きる女性に

「物事を始めるときに完璧である必要はないよ」と、私はよく生徒たちに話しています。やるからには完璧にという考え方を否定はしませんが、完璧を目指すあまりに着手できない、あるいは途中で投げ出してしまうより、不完全な状態でもやってみてアイデアを形にする、すなわち「やりきること」が重要だと思うのです。やりきって形にすると、足りないところや課題が見えてきます。そこから問いを立て、試行錯誤しながら修正や改善を繰り返し、より良いものを目指していく。これこそ探究的な学びではないでしょうか。やりきるまでの過程には失敗もあるでしょう。今度こそはと挑戦して挫折することもあるでしょう。それでも諦めないで取り組み続け、やりきることで、困難に遭ってもそれを乗り越えていく力、「レジリエンス」が鍛えられていきます。

もう一つ、みらい科の授業はグループワークが豊富です。クラスメイトとの協働は、自分と異なる価値観に出会い、人の数だけ考え方や感じ方があること、「多様性」を身をもって知る絶好の機会です。「そういう見方もあるのか」という気づきを通して、視野が大きく広がるでしょう。みらい科では、企業と連携した授業も展開しています。協力してくださる企業の方々は、“中高生の提案だから”という目線ではなく、みなさん真摯な姿勢で生徒に向き合ってくださる方ばかりです。その熱量に応えられるよう、同じ企業との関わりを長期にわたって継続し、企業から生徒への一方的な支援ではなく、相互に学び合える関係を築くことも大切にしたいと考えています。

大久保 靖 校長

取材日:2026.9.14